安西メディカル株式会社
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概要

呼吸同期システムとは?

肺や肝臓など、呼吸性移動を伴う臓器に生じた腫瘍の画像診断や放射線治療を行う際の課題は、画像撮影中または放射線治療中に、患者さんの呼吸によって臓器や腫瘍の位置が移動してしまうことです。
この呼吸性移動により、画像診断では、撮影した画像の空間分解能低下やアーチファクトが生じるおそれがあります。また、放射線治療中は、腫瘍部分に十分な放射線量が照射されず治療効果が低下すること、 さらに周囲の正常組織に不要な放射線が照射され放射線障害の副作用を生じることが懸念されます。
安定した呼吸状態における呼吸性移動は、周期的な繰り返し運動であり、周期関数で近似することができます。呼吸のサイクルは吸気と呼気から成り立っており、そのパターンは比較的規則的です。この特徴を利用し、特定の呼吸状態(例えば、息を最も吸い込んだ時、息を吐き切った時、またはその中間の時など)にある間だけ、画像撮影や放射線照射を行えば、呼吸性移動の影響を受けない、高精度の画像撮影や放射線治療が可能となります。 このように、呼吸の動きに合わせて呼吸同期撮影や呼吸同期照射を行うための医療機器です。

RESPIRATORY
GATING
SYSTEM

安西メディカルの呼吸同期システムとは?

世界初の呼吸同期システムは、筑波大学附属病院との共同開発にて1987年に誕生しました。それから38年を迎え、安西メディカルのAZ-733VIは一つの完成形に達しました。
画像診断分野では、CT装置と呼吸同期システムを組み合わせ、患者の呼吸周期全体にわたるCTを撮影し(呼吸状態ごとのCT画像の集合体)、 動きのある4D-CTを作成したり、動きを考慮した放射線治療計画を立てたりする使い方が一般的になっています。
放射線治療分野における呼吸同期システム高速化へのご要望に応え、呼吸信号検出からゲート信号出力までのゲート信号出力遅延時間50ms以下を達成しました。また、標準装備の呼吸センサLoad cell 2種類 (安西ベルト:接触型)の他に、 オプションとしてLaser Sensor 3種類(非接触型)も開発し、医療現場からの様々なご要望にも柔軟に対応しております。
メインユニットであるSensor Portには、呼吸センサを最大3台まで接続でき、呼吸信号の同時取得機能も備わっております。 患者様の呼吸センサ装着状態確認や調整作業を、治療室に置かれたSensor Portで行えるよう機能強化いたしました。 これにより、煩わしかった作業が大幅に時間短縮できるようになりました。
前モデルAZ-733Vから継承された安全機能をさらに強化すると共に、PC画面のユーザインタフェースは直観的操作と設定内容の事前確認を可能にし、誤操作を防止します。 加えて、患者様の呼吸状態急変などに即時対応するため、Gate Disable Switch(遮断スイッチ)を標準装備しました。
画像診断装置や放射線治療装置など、各種外部機器を最大3台まで接続可能となりました。このうちゲート信号を出力する外部機器は1台で、PC画面から切り替えます。 前モデルAZ-733Vからの強化機能である各種ゲート信号出力モードと併せ、 広範囲の外部機器と組み合せてご使用いただくことが可能です。
最近、注目されている難治性心室性不整脈の放射線治療においては、呼吸心電同期が必須ですが、弊社のAZ-733VIは、呼吸センサと心電計の出力を同時入力して、呼吸と心電の両者に同期したゲート信号を出力可能であり、今後の臨床適用が期待されております。

FEATURE
OF
AZ-733VI

接続実績一覧

安西メディカルの呼吸同期システムは世界中で販売されており、これまでに約2000台の実績があります。現在、以下に示す各社の放射線治療装置や画像診断装置と組み合わせて使用することができます。

CT
  • シーメンスヘルスケア株式会社(本社:Siemens Healthcare Gmbh)
  • キヤノンメディカルシステムズ株式会社
PET-CT
  • シーメンスヘルスケア株式会社(本社:Siemens Healthcare Gmbh)
  • キヤノンメディカルシステムズ株式会社
Linear Accelerator
  • シーメンスヘルスケア株式会社(本社:Siemens Healthcare Gmbh)
  • 三菱電機株式会社
  • エレクタ株式会社(本社:ELEKTA AB)
Particle Therapy
  • IBA
  • 住友重機械工業株式会社
  • 東芝エネルギーシステムズ株式会社
  • 株式会社 日立製作所
  • 三菱電機株式会社

特徴

  • モダリティに応じて使い分ける呼吸センサー
  • 遅延時間の短縮
  • 優れたコストパフォーマンス
  • 複数センサの使用が可能
  • 心電・呼吸同期信号の出力
  • 簡単な波形調整
  • 呼吸量の絶対値表示
  • 充実したファイル管理
  • 新ゲート出力モードの追加
  • 呼吸モニタの追加
  • 緊急時のゲート信号停止
  • 異常呼吸検出

高性能

呼吸同期システムAZ-733VIは、呼吸同期装置に求められる基本性能を進化させました。

モダリティに応じて使い分ける呼吸センサ

2種類の高精度な呼吸センサは、組み合わせるモダリティに応じて使い分ける事が可能です。

ロードセルセンサ(患者接触方式)

歪ゲージブリッジ回路で圧力を感知するセンサです。圧力検知部をベルトで患者様に取り付けることで、呼吸運動による体表の動き(腹部の圧力変化)を呼吸波形として表示します。 腹部の動きの大きさによって『DEEP』と『STANDARD』を使い分けます。標準的な動きであれば『STANDRAD』を使用し、大きな動きであれば『DEEP』を使用します。 組み合わせるモダリティとしては、ガントリー内深くまで患者様が進入するPET-CT装置に最適です。 このセンサのセッテイングは『ロードセルセンサの取り付け方法』『呼吸センサの校正方法』をご覧ください。

レーザセンサ(患者非接触方式)

レーザ光(赤外線)の反射を測定するセンサです。患者様の地肌にレーザ光をあて、呼吸運動による体表の動き(センサまでの距離の変位量)を呼吸波形として表示します。レーザの焦点距離に応じ250mm、120mm、85mmタイプの3種類を取り揃えております。 患者様に接触しない本センサは、組み合わせるモダリティとしては放射線治療装置に最適です。このセンサのセッテイングは『レーザセンサの取付方法』『呼吸センサの校正方法』をご覧ください。

遅延時間*の短縮

高速ゲートモード:25msec以内 通常ゲートモード:50msec以内

呼吸同期システムは放射線治療装置や画像診断装置と組み合わせて使用します。組み合わせるモダリティのパフォーマンスへの影響を低減させるための最大の課題は、遅延時間の短縮でした。従来の装置に比べ高速ゲートモードでは4分の1、通常ゲートモードでは2分の1まで短縮しました。これにより、今まで以上に精度の高い放射線治療や画像診断を実現する事ができます。
*遅延時間とは、呼吸運動による体表の動きをセンサで検出してからゲート信号を出力するまでの時間を表します。

拡張性

呼吸同期システムAZ-733VIは、これまでにない拡張機能を備え、新たな可能性と繋がりを生み出します

優れたコストパフォーマンス

従来は1台の装置につき1台の外部装置を接続していましたが、AZ-733VIは1台に最大3種の外部装置を接続することが可能になりました。 これによりシミュレーションCTから治療に移行する際も同じ呼吸同期システムを使用でき、低予算での導入が可能になります。

ソフトウェア上でゲート信号出力先の装置を選択します。
※なおゲート信号の同時出力は行なえません。

複数センサの使用

呼吸同期システムAZ-733VIは、呼吸センサを最大3個まで同時に使用することが可能となりました。 呼吸運動による体表への動きは患者様によって異なるため、複数個所からの呼吸情報を捉え、最も安定した箇所で呼吸ゲーティングをすることができます。

心電・呼吸同期信号の出力

呼吸同期システムAZ-733VIは、心電計を接続して心電・呼吸同期信号を出力する機能を備えます。任意に設定された呼吸同期信号と心電同期信号が重なった時に心電・呼吸同期信号を外部機器に出力します。

利便性

操作性の向上と充実したファイル管理により、世界中のユーザ様が満足いただけるアプリケーションを目指しました。

簡単な呼吸波形調整

従来は1台の装置につき1台の外部装置を接続していましたが、AZ-733VIは1台に最大3種の外部装置を接続することが可能になりました。 これによりシミュレーションCTから治療に移行する際も同じ呼吸同期システムを使用でき、低予算での導入が可能になります。

充実した患者データ管理

保存した患者様のデータを保存・再生するだけでなく、患者様の呼吸の特徴を把握しやすくするために呼吸情報を時系列に表示することや、呼吸レベルまたは呼吸レート別に集計してヒストグラム表示することができます。

患者データのテーブル表示

患者データのヒストグラム表示

効率化

呼吸ゲーティングの効率化(短時間の治療・撮影)が、患者様負担を低減いたします

新ゲート出力モードの追加

主に放射線治療で使用する『Level to Level』モードを新しく追加しました。 呼吸位相による影響(移動)が少ない位相を決めてゲート信号を外部装置へ出力します。 呼気・吸気に関係なく設定レベル内でゲート信号を出力するので、息止め照射も可能です。

上記はLevel20~60のでゲート信号を出力しますので、 1呼吸サイクルの間に2個のゲート信号が出力されます。

呼吸モニタの追加

呼吸ゲーティングは患者様の呼吸状態に依存する治療・撮影となります。 患者様自身が呼吸波形を見て、意識して呼吸をおこなえるように呼吸モニタを用意しました。 患者様の呼吸状態が安定することで治療・診断時間の短縮化が望めます。

安全機能

さまざまな安全機能により、呼吸同期システムAZ-733VIを安全にご使用していただけます。

緊急時のゲート信号停止

緊急時には、ゲート遮断スイッチでゲート信号の出力を強制的に停止できます。

異常呼吸検出

以下の呼吸異常を検出した際にはエラーメッセージをソフトウェア上に表示し、外部装置へのゲート出力を停止します。

  • くしゃみや体動による異常呼吸の検出
  • 呼吸回数異常の検出
  • 呼吸停止の検出
  • 呼気ピーク異常の検出
  • 吸気ピーク異常の検出
  • 平均呼吸に対する異常の検出

仕様

標準構成品

センサーポート

寸法
260×230×126mm
重量
約5.0kg
電源
AC100~240V(50/60Hz)、200VA以下
モニタ部
呼吸波形情報表示、接続センサ表示
その他
接続された呼吸センサの呼吸波形を自動調整

中継ボックス

寸法
172×123×86mm
重量
約2.0kg
出力信号
ゲート信号、(ビーム信号、波形情報、インターロック)

ロードセル(2種) STANDARD、DEEP

寸法
センサ部 :30φ×9.5、 ロードセルアンプ :85×27×30mm
重量
約95g
測定範囲
0~500g(STANDARD)、 0~1000g(DEEP)
ケーブル長
2.9m

ゲート遮断スイッチ

寸法
70×35×50mm
重量
約0.3kg

パーソナルコンピュータ

電源
AC100~240V(50/60Hz)、 200VA以下
OS
Windows 10
寸法
384×34×258
重量
約3kg

ロードセル固定ベルト(4種類)S、M、L、LLサイズ

長さ
S:650mm、M:1000mm、L:1300mm、LL:1600mm
60mm(S、M、L、LL)

オプション

レーザセンサ(3種) 250mm、120mm、85mm(T型、固定台付き)

寸法
センサ部:67×22×57mm、 レーザセンサアンプ:92×27×35mm
重量
約360g
測定範囲
(250mm):250mm±150mm
(120mm):120mm±60mm
(85mm) :85mm±20mm

ABLE(固定台付き)

電源電圧
タブレット:バッテリー駆動 / トランシーバ:DC+12V(AZ-733VIによる給電
送信/受信周波数帯
タブレット:2.4GHz帯 / トランシーバ:2402~2480MHz
寸法
タブレット:83×159×10mm / トランシーバ:85×35×25mm
重量
タブレット:約200g / トランシーバ:約80g

センサーポートスタンド

寸法
Φ520×800mm
重量
8.7㎏

ユーザーレポート

メディポリス国際陽子線治療センター センター長

荻野 尚 先生

接続装置:陽子線治療装置(三菱電機)
使用目的:肺、肝臓の腫瘍への呼吸同期照射

荻野先生は、1996年本邦において初めてとなる医療専用の陽子線治療施設である国立がんセンター東病院の設立から立会われ、安西メディカル社の呼吸同期装置との関わりあいは10年以上となります。陽子線治療の特徴である正常組織への影響を少なくしつつ、がん病巣に集中した放射線の効果を得る治療において、呼吸同期照射は不可欠であるとのことで、呼吸同期照射治療の臨床経験が豊富な先生からのコメントをご紹介させていただきます。

「初期の安西メディカルの呼吸同期装置では、呼吸センサーの取扱いに手こずることもあったが、現在のレーザセンサでは患者への施行が簡便になり、また、得られる呼吸波形もターゲットとの相関性に確信をもっている。呼吸同期照射は、一般的に通常の照射と比べると治療時間が長くかかり効率が悪いと言われているが、患者様の協力が得られれば、実際はそれほど時間を要しません。むしろ必ず必要である患者固定の時間が治療トータル時間に占める割合が大きいため、呼吸同期照射を行なうことで治療時間の効率低下を指摘するよりは、人体に放射線をあてて治療する副作用(正常組織の炎症や低被ばくから発生するがん)を低く抑えることができる陽子線の特徴を生かさない治療のほうが、相対的にみてリスクがあるように感じます。海外の粒子線治療施設で呼吸同期照射の実施例が少ないのが不思議です。」

陽子線治療装置を利用した治療の特集

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論文

1. Hoshina M, Noguchi M, Takanashi M, Masuda K, Sugahara S. Clinical Implementation and Initial Validation of Respiratory-Gated Stereotactic Body Radiotherapy for Thoracoabdominal Tumors Under Abdominal Compression Using an Anzai Laser-Based Gating Device With Visual Guidance on an Elekta Linear Accelerator. Cureus. 2024;16:e59638. DOI: 10.7759/cureus.59638

2. Hoshina M, Noguchi M, Sekihara H, Masuda K, Shinmura M, Sugahara S. Chest Wall to Heart Distance Reproducibility in Postoperative Deep Inspiration Breath-Hold Radiotherapy for Left-Sided Breast Cancer Using an Anzai Laser Sensor With Visual Feedback. Cureus. 2024;16:e53183. DOI: 10.7759/cureus.53183

3. Walker MD, Morgan AJ, Bradley KM, McGowan DR. Data-Driven Respiratory Gating Outperforms Device-Based Gating for Clinical 18F-FDG PET/CT. J Nucl Med. 2020;61:1678-1683. DOI: 10.2967/jnumed.120.242248

4. Cummings D, Tang S, Ichter W, Wang P, Sturgeon JD, Lee AK, Chang C. Four-dimensional Plan Optimization for the Treatment of Lung Tumors Using Pencil-beam Scanning Proton Radiotherapy. Cureus. 2018;10:e3192. DOI: 10.7759/cureus.3192

5. Snyder JE, Flynn RT, Hyer DE. Implementation of respiratory-gated VMAT on a Versa HD linear accelerator. J Appl Clin Med Phys. 2017;18:152-161. DOI: 10.1002/acm2.12160

6. Büther F, Vehren T, Schäfers KP, Schäfers M. Impact of Data-driven Respiratory Gating in Clinical PET. Radiology. 2016;281:229-38. DOI: 10.1148/radiol.2016152067

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